くまだかいぬだか

「いま、ここ」を飛び出したい。物語が好き。

『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展』に行く前/行った後に!英国ロンドン・ナショナル・ギャラリーの見どころ

f:id:kumataroux:20200901012838j:image

上野の国立西洋美術館では現在、『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展』が開催されています。

会期は10月18日まで、その後は大阪の国立国際美術館に巡回し、11月3日〜来年1月31日の開催予定です。

上野では6月中旬からの開催でしたが、コロナ禍での東京開催ということでまだ観に行けていない人や(私もです)、短時間で流し観て帰ってしまった人もいるのではないでしょうか。

(9/11追記:行ってきました!)

onceinabluemoonx.hatenablog.com

今回は本場、ロンドンのナショナル・ギャラリーの沿革や見どころを紹介したいと思います。

時間がない方は見どころからどうぞ!

ロンドン・ナショナル・ギャラリーとは

沿革

1824年設立。

4年後には200周年を迎えるイギリス・ロンドンの歴史ある美術館です。

王室や貴族のコレクションを母体としていない点がヨーロッパの多くの美術館と異なります。

銀行家のジョン・ジュリアス・アンガースタインという一市民の遺した38点のコレクションが売りに出され、国がこれを買い取って国立美術館を創立しました。

その後の蒐集を経て、現在ではイギリスを含めたヨーロッパ各国の、13世紀後半から20世紀初頭までに渡る約2,300点の作品を所蔵するまでに至っています。

年間の来場者数は、世界の美術館・博物館でもトップ10に入る約600万人超。

まさに世界を代表する美術館と言えるでしょう。*1

場所

ロンドン中心部の繁華街、Soho(ソーホー)エリアに立地しています。

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』でハリーとロンとハーマイオニーがロンドンバスに轢かれかけた、ピカデリー・サーカスの近くです。

他にもオックスフォード・ストリート、チャイナタウンなどがあり、ちょっと行くと『マイ・フェア・レディ』でオードリー演じるイライザが教授と出会ったコヴェント・ガーデン・マーケットに辿り着くエリアです。

周辺にはミュージカル劇場も多いので、芸術的で華やかな雰囲気でした。

ナショナル・ギャラリーはトラファルガー・スクエアに面しています。

ネルソン提督指揮するイギリス艦隊がナポレオンの連合艦隊に勝利した1805年のトラファルガーの海戦を記念した広場だそうで、中心には高い記念柱が立っています。

入場料

ナショナル・ギャラリーの素晴らしいところの一つが、入場料が無料なところです。

観光の隙間時間にふらっとナショナル・ギャラリーに立ち寄って名画を鑑賞できる、ってかなり贅沢ですよね。

ちなみにイギリスでは、大英博物館やヴィクトリア&アルバート美術館、テート・ブリテンやテート・モダンなど大きくて有名な美術館が軒並み入場無料(寄付制)なので、時間があれば何日も通うのにちょうど良いです。

ナショナル・ギャラリー館内にも寄付箱があるので、館内図のパンフレットをもらうついでに何ポンドか入れると多分スマートです。

見どころ

ロンドン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されている作品をいくつか紹介します。*2

ゴッホ《ひまわり》

f:id:kumataroux:20200901000503j:plain

フィンセント・ファン・ゴッホ 《ひまわり》(1888)

日本での知名度が抜群に高いゴッホの《ひまわり》。

1888年に南仏アルルでゴーギャンと共同生活を送ることになったゴッホは、ゴーギャンを歓迎するため《ひまわり》シリーズを描き始めました。

花がしおれるまで4点をキャンバスに描き、そのうちの2点のみをゴーギャンの寝室を飾るに相応しいと認めてサインを施しましたが、これはそのうちの一点です。

損保ジャパン日本興亜美術館にある《ひまわり》はこの作品を元に描いたものだそうです。

今回の展覧会に出展されています。

ダ・ヴィンチ《岩窟の聖母》

f:id:kumataroux:20200901010222j:plain

レオナルド・ダ・ヴィンチ《岩窟の聖母》(1508頃)

知らない人はいない万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ

彼の《岩窟の聖母》もナショナル・ギャラリーに所蔵されています。

ほぼ同じ構図、構成の作品が2つあり、もう一つはルーヴル美術館蔵です。

ルーヴル版の方が、『ダ・ヴィンチ・コード』に登場するなど一般的に知られている印象があります。

ナショナル・ギャラリー版は全体的に青っぽい画面が特徴です。

残念ながら今回日本には来ていません。

ヤン・ファン・エイク《ジョヴァンニ(?)・アルノルフィニとその妻の肖像》

f:id:kumataroux:20200901001805j:plain

ヤン・ファン・エイク《ジョヴァンニ(?)・アルノルフィニとその妻の肖像》(1434)

美術の教科書に載っていたので観たことがある人が多いのではないでしょうか。

ヤン・ファン・エイクネーデルラント(今のオランダ)の画家です。

背後の壁にかけられた鏡には、よく見ると夫妻と画家ともう一人が映り込んでいます。

今回は出展されていませんが、その緻密な描き込みはぜひ実際に目にして圧倒されてほしいです。

フェルメール《ヴァージナルの前に立つ若い女性》《ヴァージナルの前に座る若い女性》

f:id:kumataroux:20200901002802j:plain

ヨハネス・フェルメール《ヴァージナルの前に立つ若い女性》(1670頃)

f:id:kumataroux:20200901003104j:plain

ヨハネス・フェルメール《ヴァージナルの前に座る若い女性》(1670頃)

同じネーデルラントの画家でもこちらの方が有名でしょう。

世界に35点ほどしか知られていないフェルメールの作品のうちの2つが、ナショナル・ギャラリーに所蔵されています。

この2点は対になる作品ではないかと言われています。

女性の背景にある絵画(画中画)に注目してください。

《立つ女性》の背後に掛かっているのはキューピッドの絵です。

キューピッドは「恋人への貞節」のエンブレムであると解釈されます。

一方《座る女性》の背景にあるのは、ディルク・ファン・バビューレン《取り持ち女》と思われる、売春宿の情景を描いた絵です。

2点の作品が対になることによって、対照的な愛の形を表現していると言えます。

こんな風に、緻密な画面に込められた寓意を読み取るのもフェルメール作品の楽しみ方の1つです。

今回のナショナル・ギャラリー展では、下の《座る女性》が初来日します。

フェルメール作品は初期のものを除いて、基本的に市井の人の家に飾れるサイズで描かれているので、実際に観てみるとかなり小さいです。

しかもおそらく、作品前には人だかりか行列ができて近くで観られないと思うので、オペラグラスを持って行くのがオススメです。

ターナー《解体のため最後の停泊地に引かれていく戦艦テメレール号》

f:id:kumataroux:20200901005246j:plain

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《解体のため最後の停泊地に引かれていく戦艦テメレール号》(1839以前)

ターナーといえばイギリスを代表する風景画家。

この絵は、トラファルガーの海戦でフランスに打ち勝った戦艦・テメレール号が、蒸気船の時代となって活躍の場がなくなり、解体業者の元に売られていく様子を描いた、愛国心に満ちた作品だそうです。

今回はこの絵ではなく、同じターナーの《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》(1829)が出展されます。

 

きりがないのでこの辺りにしますが、今回は他にもモネの《睡蓮の池》やレンブラント《34歳の自画像》などが出展されています。

イギリス国外でナショナル・ギャラリーの所蔵作品展が開催されるのは、世界で初めてだそうです。

コロナ禍で外出しづらい中ではありますが、せっかくの機会です。

ぜひロンドン・ナショナル・ギャラリーの至宝を日本で堪能しましょう。

artexhibition.jp

www.nationalgallery.org.uk

実際に行ってみたレポはこちら

onceinabluemoonx.hatenablog.com