くまだかいぬだか

「いま、ここ」を飛び出したい。物語が好き。

気軽に行くな、他人の地元 『ミッドサマー』と高田大介『まほり』、ミイラ展

ミッドサマー、観ましたか??

タイミングを逃し続けてこの時期にブログ書いてるんですけど、私は公開初日に観ました。

ちなみに一番怖かったシーンは、エンドロールが終わって映画館が明るくなった時、隣に座った友達が今まで見たことがないくらいの満面の笑みをたたえていたところです。

 

さて、今回書きたいのは、アリ・アスター監督の映画『ミッドサマー』と、『図書館の魔女』で知られる高田大介のミステリ小説『まほり』(KADOKAWA、2019.10)って似てない?? ってことです。

見た限りでは誰も指摘している人いないけど、それが不思議なくらいこの2作はよく似ていると思うんですよね。

 

あまりネタバレしないように書いていますが、新鮮な驚きを持って両作を堪能したい方はぜひUターンして、鑑賞後に読んでください。

www.phantom-film.com

 

 

さて、映画『ミッドサマー』のあらすじを簡単に確認します。

家族を不慮の事故で失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人と共にスウェーデンの奥地で開かれる”90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった。

https://www.phantom-film.com/midsommar/

アメリカの大学生・ダニーの妹が、ある日両親を巻き添えにして無理心中してしまいます。

もともとダニーは精神疾患を持っていたんですけど(妹も)、家族を失ったことでますます不安定な心理状態になります。

ここで恋人のクリスチャンが頼りになるのかと思いきや、彼はダニー重いわー、でも今別れるのもなー、とか考えてダラダラと付き合い続けている様子。

そんな中、大学で文化人類学を専攻するクリスチャンが、友人の地元であるスウェーデンの田舎町・ホルガに複数人で行こうとしていることを知ったダニー。

何で私に内緒にしてたわけ!? とキレます。気持ちはわかる!!!

それで私もホルガに連れてって! と言います。やめとけ!!!!!!

めんどくさくなったクリスチャン、いいよーって言います。断れよ!!!!!!!!!

他の友達は露骨にマジかよって態度を取るんですが、ホルガ村出身のペレはなぜか彼女を歓迎します。

こうして彼らは、90年に一度開催されるという夏至祭に参加することになり、大変なことに巻き込まれていって…

という話です。

 

一方の『まほり』はこんなあらすじです。

「まほり」とは何か?

蛇の目紋に秘められた忌まわしき因習
膨大な史料から浮かび上がる恐るべき真実

大学院で社会学研究科を目指して研究を続けている大学四年生の勝山裕。卒研グループの飲み会に誘われた彼は、その際に出た都市伝説に興味をひかれる。上州の村では、二重丸が書かれた紙がいたるところに貼られているというのだ。この蛇の目紋は何を意味するのか? ちょうどその村に出身地が近かった裕は、夏休みの帰郷のついでに調査を始めた。偶然、図書館で司書のバイトをしていた昔なじみの飯山香織とともにフィールドワークを始めるが、調査の過程で出会った少年から不穏な噂を聞く。その村では少女が監禁されているというのだ……。代々伝わる、恐るべき因習とは? そして「まほり」の意味とは?
『図書館の魔女』の著者が放つ、初の長篇民俗学ミステリ!

https://www.kadokawa.co.jp/product/321904000322/

もうこの時点で似てません?

具体的にどこが似ているのか考えてみました。

 

①隔絶された村

『ミッドサマー』のホルガ村は、現代社会からは隔絶した価値観で回っているカルト村。

『まほり』の舞台となるのは上州の山奥の地域なのですが、調査を進めるうちに、その中でも昔から周囲との交流を絶って存在している村に近づいていき…という展開です。

スウェーデンの地域事情はよくわかりませんが、「日本」という一つの国、という概念が生まれたのって近代以後ですよね。

それまでは自分の属している地域が「くに」だったわけで、そう考えると他の地域ってつまり異国、異郷。

くにが違えば、そこには自分たちとは違う価値基準が存在するんですよね。

現代の私たちは簡単に出かけてしまうけれど、本来別の場所に行くことは越境行為であって、その行為自体にもっと畏れを持つ必要があるのではないか…というようなことを考えたりしました。

 

民俗学

『ミッドサマー』のクリスチャンたちは文化人類学を学ぶ学生、論文のためのフィールドワークという名目で、伝統的な夏至祭の行われるホルガ村を訪れていました。

『まほり』の主人公・勝山裕は社会学を専攻する大学生で、土地にまつわる伝説に興味を持ったことから、民俗学的な研究を行うべく上州の村を訪れます。

地域の伝承って、どうしてこうも人を引き寄せるんでしょうね…。

ちなみに『まほり』という小説の真骨頂は、裕と図書館司書を目指す香織が協力して行っていく誠実な調査研究過程の描写にあると思っています。

一次資料としての古文書にアクセスし、一歩一歩事実に近づいていく。

単体で見たら取るに足らない内容に見えても、多くの資料がパズルのピースとして合わさることで、思いがけない全体像が浮かび上がってくる。

この過程にカタルシスを感じられれば倍楽しめる小説です。地味なのに気持ちいい…。

それに引き換えクリスチャンは、友人ジョシュの研究テーマをパクろうとしているので大学生の片隅にも置けませんね。

 

③盲目の女性

若干ネタバレなんですけど、『ミッドサマー』でも『まほり』でも「盲目の女性」がコミュニティにおいて神と通じる巫女的な重要な役割を担っています。

世界の東西に隔てられているにも拘らずのこの符合は何を意味するのでしょうか。

世俗のモノが見えないからこそ、この世ならざるモノが見えるということなのか。

「普通」と違う人のことを忌避しながら同時に特別視するという考え方が、普遍的なのか。

こういうこと考えるとやっぱり民俗学って面白そうですよねー。

 

ところで『ミッドサマー』を観る少し前に、上野でやっていたミイラ展に行きました。

ガラス越しにモノとしてのミイラを見る分にはすごく楽しかったんですけど、作った当時のことを考えてしまうと文化背景が透けて見えてきて、よく考えたら怖くなりそうなのでやめました。

とりあえずミッドサマー観た後に行かなくてよかった。

古代エジプトインカ帝国だけじゃなくて、世界各地にミイラ文化があることに驚きましたが、それぞれちょっとずつ違いがありました。

その土地にはその土地の風習があるわけですよね。

ホルガ村の文化も、上州のある村の文化も、否定されるべきものではなくて。

ただ、関係ない人が関わるとあんまり良いことがなさそうだと思いました。

 

【結論】

他人の地元 行くな 危険

彼氏が「ワートリはいいぞ。」と言うから読んでみたらたしかによかった。

「ワートリはいいぞ。」

葦原大介ワールドトリガー』(通称「ワートリ」)をオススメするときの常套句らしい。

 

マンガ好きの彼氏があまりにも「ワートリはいいぞ。」と言うので読んでみたら、期待以上に面白かった。

 

ちなみに私はなかよしや別マを嗜みながら育った典型的な恋愛脳の20代女性であり、普段あまり少年マンガを読まない。

そんな少年マンガ初心者の感想だということを心に留めて読んでいただければ幸いだ。

それにしても私、初心者であることを笠に着たブログばっかり書いてるな。

持たざる者の物語

人口28万人が暮らす都市・三門市に、ある日突然異次元への「門(ゲート)」が出現。門から現れた異世界の侵略者「近界民(ネイバー)」に襲撃され、街は戦火をうける。しかし、その場は界境防衛機関「ボーダー」によって救われた。近界民には、生体エネルギー「トリオン」の力で稼動する近界民が生んだ技術「トリガー」が唯一の対抗手段であり、ボーダーの主な武器となっている。そして約4年後の現在も、人々はボーダーに守られ日常を送る。ボーダー隊員・三雲修は、近界民・空閑遊真と運命的な出会いを果たす。修の勧めで遊真はボーダーに入隊し、二人は行動を共にする。

ジャンプSQ.│『ワールドトリガー』葦原大介

ワートリを一言で表すなら「持たざる者の物語」だと思う。

思うっていうか公式でバンバン言われてるけど。

上の文はコミックスあらすじからの引用なのだけれど、「ボーダー隊員・三雲修」って強そうに聞こえる。

ところがこの修が、めっちゃ弱い

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http://worldtrigger.info/article/border.phpより

そもそも物語は、中学校に通う修がいじめっ子たちに暴力を振るわれる日常から始まる。

いじめてる奴らと戦う話なのか…と思ってたら全然違って笑った。

ワートリの世界観の中で重要なキーワードになるのが「トリオン」という概念で、ボーダーの隊員は基本的にこの生体エネルギーを元に戦う。

トリオンは人の体内にある「トリオン器官」で生み出されるのだが、そのトリオン量は人によって異なる。

例えば修の幼馴染で、同じ玉狛第二(チーム)の千佳は、子どものような外見にも関わらず生まれつき甚大なトリオン量を有している。

一方の修はこのトリオン量が非常に少ない。

少ないとどうなるかというと、攻撃力や体力が劣ることになり、戦いで圧倒的に不利だ。

例えば「MAJOR」の本田吾郎とか、「鬼滅の刃」の竈門炭治郎とか、私の知る少年マンガの主人公ってだいたい生まれながらにして光るものを持っていて、努力によって才能が開花していくものだった。

近界民であるにも関わらずチームの一員となった遊真は、豊富な戦闘経験に基づく高度な能力を持っていて、上記のような文脈でいけば遊真を絶対的な主人公に据える手もあったはずだ。

修の場合は戦っても戦っても身体的能力がガツンと上がることはない。弱い(今のところ)。

その代わりに武器となるのが頭脳だ。

天才なのかというとそういうわけでもなくて、修は過去の試合データを分析したり先輩に教えを請うたりして、頭を使って地道に作戦を立てることによって戦う。

綿密な作戦によって悠真や千佳の能力が最大限に引き出されるが、修本人はというと狭い道にひたすら蜘蛛の巣状の罠を仕込んだりしていてなかなか地味だ。

ところでブログを書くにあたって「ワートリの主人公って誰だ?」と思って調べたところ、作者の葦原さんは空閑遊真、三雲修、雨取千佳、迅悠一の4人が主人公だと言っているらしい。

つまり、この物語はチームの物語なんだな。

1人では弱くても、仲間それぞれの強みを組み合わせることによって強くなれる。

この辺りのメッセージ性はむしろ、自分が特別な何者かではないと気づいてしまった大人に刺さるんじゃないかと思った。っていうか刺さった。

ウルトラマンは血を流さない

ウルトラマンでは怪獣が八つ裂きにされても血が流れないことを知っているだろうか。

円谷英二は子ども向けの映像で血を見せることを嫌ったそうだ。

ワートリにおいて特筆すべきところは、同じく、戦いの中で(ほとんど)血が描かれないことだと思う。

これを可能にする仕掛けが「トリオン体」だ。

見かけはほとんど生身と変わらないが、先ほどのトリオンで作られた戦闘用ボディで戦う。

戦いの中では頭が飛んだり腕がもげたりするのだけれど、トリオン体が破壊されると緊急脱出機能で本部に帰ってくるようになっている。

だからトリオン体になって戦うボーダー隊員達は(今のところ)死なないし、切り口(傷口というよりは)からトリオンが煙のように出ても、生身ではないので血が出ない。

これは結構大事なことだと思っていて、やはり少年ジャンプ(今はスクエアだけど)という媒体に掲載される以上、それを読む子どもたちへの影響を考慮した作品作りをするべきじゃないか。

戦いの場面が多い物語なのに何となくほのぼのとしているのは、ワートリという作品にこういった仕掛けがあってのことだ。

まあ遠征をメインストーリーとするなら今はまだ壮大なプロローグの段階なので、今後どうなるかはわからないが、これが作者のポリシーならぜひ貫いてほしい。

紙のコミックスを読み返したくなる

実は読み始めたきっかけが、アプリ「ジャンプ+」に9巻までが無料掲載されたことだった。

しかしこれが面白いところで、ワートリは絶対に紙で読み返したくなる作品になっている。

もし物語序盤で脱落してしまう読者がいたとしたら、その原因はきっと、知らない登場人物達が畳み掛けるようにたくさん出てくることにある。

ブラックトリガー争奪戦や大規模侵攻編では、その時点までで紹介されていない大勢のキャラクターがいきなり出てきて活躍する。

そして後の巻でB級ランク戦が始まると、「あの時出てきた人だ!」という再会を果たす仕組みだ。

これはもう、同時に○巻と△巻を開いて読み合わせるしかない!ということになる。

紙のコミックスって最近はあまり売れないのかもしれないけれど、紙だからこそ楽しめる読み方を提案しているという点でワートリは出版業界に一石を投じる作品なのではないか。

私はまだ2周くらいしかしていないけれど、読み返す度に新しい発見がありそうでワクワクする。

きみたち学校行ってんの?

気になることとしては、この子たち学校行ってるの? ってこと。

たまに思い出したように登校しているけど、葦原さん絶対学校生活を描くことに興味ないと思う。

元小学校教師としてはやっぱり、義務教育段階の中学生は勉強に専念したほうがいいと思うの…。

比較対象としてどうかと思うけど、「美男高校地球防衛部LOVE!」とか高校通いながら地球守ってますからね。

ただ読者的には、修たちの「次の定期テストで全員平均点以上取らないと活動が止められちゃう!みんなで勉強合宿しよう!の回」を読まされて楽しいかと言われたら微妙かもしれない。

ただ東さん、あんたは大学院生なんだから研究室に詰めろ。週7で詰めろ。

その点鬼滅上手いな〜と思うのは、大正時代なら学校行ってない子どもがよんどころない事情で戦っていてもしょうがないかな、と納得できるところだ。

鬼滅の刃と比較して

もう少し語らせてもらうと、鬼滅はジェンダーロールをかなり固定的に描いている点が気になっている。

炭治郎の「長男だから〜」なんて台詞は現代から見たら違和感を感じるし、基本的に戦う男の子と守られる、あるいは献身的に世話を焼く女の子、という性役割が明らかだ。

まず口枷を付けられて片言しか喋れなくなった美少女がメインキャラの時点で本来は結構やばい。

PTA的には特に問題ないんだろうか。

私も文句を言いたいわけではなくて、大正時代だから、と言われれば時代に回収される問題だし、そういう旧い時代への郷愁を込めてファンタジックな異界としての「大正」が設定されているのは理解できる。と思っている。面白いし。

しかしその点、ワートリは女の子の隊員も結構多くて、みんな対等に戦っている印象を受けた。良い悪いではないけれど、私としては好感を持った部分だった。

 「ワートリはいいぞ。」

あくまでも初心者の感想なのでこの作品の魅力を伝えられたかどうかはわからないけれど、この言葉で締めたい。

「ワートリはいいぞ。」

西荻窪の古本屋に行ってみたら天国だった。その③

西荻窪に足を踏み入れようとしている全ての初心者の方に、

一回しか行ったことのない初心者が贈る、

西荻窪古本屋レビュー Part.3

 

最終回は、北口のお店を紹介します! 

 

前回までの記事はこちら

onceinabluemoonx.hatenablog.com

onceinabluemoonx.hatenablog.com

1. 古書音羽館

北口を出ると駅前に賑やかな道があるのですが、その道を途中で左に曲がります。

すると右側にカーブしていくので、道なりに進みます。

マンションの中にポツポツとレストランが並ぶ細い道です。

「キッチンキャロット」というお店のある角を右に曲がると「古書音羽館」です。

普通のマンションの一階部分に入っているのでわかりにくいかもしれません。

私はなかなか見つけられず迷子になりました。

 

音羽館さんはとにかく品揃えがよかったです。

Googleマップの口コミを見ても評判が良いようで、界隈では有名なのでしょうか。

今までの記事で紹介したような古本屋さんは、どちらかというと個性的で、得意な分野がはっきりしているお店でした。

こちらでは文学・芸術系を中心に、比較的バランスよく本が並んでいたので、古本屋巡り初心者でもとっつきやすいかと思います。

 

入り口が二つありますが、店内で繋がっています。

たしか向かって左側のエリアが文学系、右側のエリアが芸術系でした。

店頭では100円〜文庫、新書、雑誌などが陳列されているので、まずはこちらから物色してみるのがおすすめです。

 

【私が買った本】

エドガー・アラン・ポー著・巽孝之訳『モルグ街の殺人・黄金虫ーポー短編集Ⅱ ミステリ編ー』(新潮文庫、2009.5)

【夜ご飯の後にうろうろしたい度】

☆☆☆☆☆

2. 花鳥風月

こちらのお店も、ジャンルを絞らず本を揃えている印象でした。

北口駅前の賑やかな道を西に進みます。

ずっと歩いていると右手に西荻窪北中央公園があります。

しばらく行くと右手にあるのが花鳥風月さんです。

 

お店は広いですが、古書音羽館さんよりは玄人向けっぽい品揃えでした。

思わぬ掘り出し物があるかもしれません。

 

【私が買った本】

宇野常寛『リトル・ピープルの時代』(幻冬社、2011.7)

この世界は終わらないし、世界の“外部”も存在しない。しかし、それは想像力が働く余地が世界から消えたことを意味しない。私たちは“いま、ここ”に留まったまま、世界を掘り下げ、どこまでも潜り、そして多重化し、拡大することができる。そうすることで、世界を変えていくことができる。リトル・ピープルの時代―それは、革命ではなくハッキングすることで世界を変化させていく“拡張現実の時代”である。“虚構の時代”から“拡張現実の時代”へ。震災後の想像力はこの本からはじまる。*1

私にとっての思わぬ掘り出し物はこの本でした。

村上春樹1Q84』におけるリトル・ピープルを切り口に、戦後ヒーローのあり方と絡めながら現代社会を論じているそうです。

なぜ不確かな書き方なのかというと、買ってすぐに彼氏に貸したら面白すぎるとのことで返してくれないからです。私も読みたいぞ。

【コアな本が眠っていそう度】

☆☆☆☆☆

3. 旅の本屋 のまど

www.nomad-books.co.jp

先ほどの西荻窪北中央公園の向かいにあるのが「旅の本屋 のまど」さんです。

店名の通り「旅」をテーマにした本屋さんで、ガイドブックはもちろんのこと、「旅行書」に限らず、諸外国の文化に触れることのできる本が揃っていました。

 

さて、旅の本屋といえば、映画「ノッティングヒルの恋人」ですよね。

ヒュー・グラント演じる主人公が営む青いドアの旅行書専門店に、ジュリア・ロバーツ演じるスター女優がお忍びで訪れたことをきっかけに、身分違いの恋物語が始まります。

この本屋が、格好つけていないのにお洒落で、居心地が良さそうで、憧れでした。

「旅の本屋」と聞いてわくわくするのは、映画のおかげでもあるかもしれません。

 

ロンドンに旅の本を専門に扱った書店がどれくらいあるのかわかりませんが、少なくとも日本ではまだあまり一般的ではない気がします。

とりあえず、「ノッティングヒルの恋人」を観た人はぜひ行ってみてください。

【私が買った本】

買っていないのでまた行きたいです。

 

【旅に出たくなる度】

☆☆☆☆☆

4. 終わりに

ブログで紹介させていただいたお店の多くが、現在休業しているようです。

偉そうなことを言う立場ではありませんが、町の本屋さんを守ることは文化を守ることだと思っています。

どうか、無事でありますように。

世界が元気になったらまた、本を探しに行きます。

*1:amazon商品ページ 内容(「BOOK」データベースより)より引用

西荻窪の古本屋に行ってみたら天国だった。その②

こんにちは。

この記事は、

西荻窪に足を踏み入れようとしている全ての初心者の方に、

一回しか行ったことのない初心者が贈る、

西荻窪古本屋レビュー Part.2  です。

 

前回はこちら

onceinabluemoonx.hatenablog.com

 

今回も南口編! 

1. BREWBOOKS

brewbooks.net

煉瓦敷きの壁に青いドアと窓が映えるBREWBOOKSさん。

右手は公園、左手は花屋に挟まれ、非常に閑静な雰囲気です。

 

このお店はただ本を売っているだけではなく、コミュニティを支える場として機能しているようで、その意味で新しい本屋の形を示していると思います。

例えば読書会、消しゴムはんこを掘る会、俳句の会など、様々なイベントを実施しているそう。

私が行った時もちょうど貸切のイベントをしていて、一度出直しました。

訪問の際は営業時間を確認していくと◎です。

 

そして何と、こちらでは2階の書斎を借りられるそうです。

しかもクラフトビール付き!

料金は¥1,000 / 1時間(1時間以降は20分ごとに¥200)、1ドリンク付きとのことです。

天才か…次回はぜひ利用させていただきたいところ。

新刊本が中心で、食に関する本が多かったです。

 

【私が買った本】

何も買ってないのに紹介しました(図々しい!)。次行ったら食べ物の本を買いたいです。

 

【近所だったら行きつけにしたい度】

☆☆☆☆☆

 

2. にわとり文庫

niwatoribunko.ocnk.net

 児童書が充実していた本屋さん。

南口側の線路沿いにあります。

 

ドアを入って右手側に絵本がディスプレイしてあって、懐かしさを誘いました。

お店の方が現地まで買い付けに行っているとのことで、外国の絵本もたくさん!

こけしなどの小物も飾ってあって、多国籍で可愛らしい雰囲気です。

 

小さなお店ですが、宝探しのような気分で長居できます。

80、90年代くらいの少女漫画雑誌もあって気になりました。

 

オンラインショップも開いているみたいなので、家に籠っている今こそ利用したいですね。

 

【私が買った本】

原田マハ『ロマンシエ』(小学館文庫、2019.2)

あえて児童書じゃない本を買うという。

原田マハさん好きです。

 

【ノスタルジック度】

☆☆☆☆☆ 

西荻窪の古本屋に行ってみたら天国だった。その①

中央線の沿線には夜遅くまでやっている良い古本屋が多いという理由で、西荻窪に引っ越してきた。夜御飯を食べた後で、散歩をしながら何軒もの古本屋をまわれる町が全国に幾つあるだろう。それを考えると、住む場所に関する選択の余地というか迷いは殆どなかった。*1

 

穂村弘をしてこう言わしめた西荻窪

古本屋好きにはたまらない天国でした。

以下3回に渡って、

西荻窪に足を踏み入れようとしている全ての初心者に贈る、

完全私見西荻窪古本屋レビュー

です。

今回は南口編!

まあ西荻窪一回しか行ってないんだけどね!

1. 本屋ロカンタン

www.roquentin.tokyo

 

住宅地の中にある本屋さんなので、見つけるのが難しいかもしれません。

西荻窪駅の南口を出ると、天井から象が吊られた短いアーケード街が正面にあります。

まっすぐまっすぐ、アーケードを抜けてもさらに進んでいき、しばらくしたら路地を左に曲がりしばらくまっすぐ進んだら適度なところでまた左に曲がります。

この通り進んでも辿り着けないと思いますので地図を見てください。

 

白い出窓が目印です。

良い意味でこじんまりとした、新しくて綺麗なお店でした。

HPを見て後から知りましたが、自宅兼本屋なのだそうです。

確かに人のお家にお邪魔したような気持ちになりました。

 

映画関係を中心に芸術系の本が多かったです。新刊書がメインとのこと。

古本はレジ右手の本棚に集まっていました。

正直なところお値段で勝負する古本屋ではないみたいです。

300円で買った本が他のお店で100円で売ってました。

ただ抜群にお洒落です。

店内にいるとマイ感受性アンテナがピンピン伸びていく気がしました。

例えるなら西荻窪本屋界のブルーボトルコーヒーといったところか。

ちなみにブルーボトルコーヒーに入ったことはないです。

 

【私が買った本】

ポール・ギャリコ著・灰島かり訳『猫語の教科書』(ちくま文庫、1998.12)

【デートにおすすめ度】

☆☆☆☆☆

2. 盛林堂書房

www.seirindousyobou.com

こちらは先ほどのロカンタンさんよりも駅近です。

南口を出たらアーケード街に入らずに、左手の広い道路をまっすぐ進むのが分かりやすいと思います。

 

盛林堂書房は正統派なザ・古書店、という感じのお店でした。

神保町でよく出合うタイプの古本屋イメージです。

「探偵小説・ミステリ・SF・絶版文庫」を中心に扱っているそう

 

私の注目ポイントは村上春樹世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の初版本が売っていたことです。

確か6000円くらいだったかな。

他にも近現代文学の初版が色々置いてありました。

詳しい人が見たらレアなものもたくさんあったはず。知識のなさが悔しい!

私はちょっと手が出ませんでしたが、ぜひ覗かれることをおすすめします。

その代わりと言ったら何ですが、店頭でワゴンセールをしていたのでこちらに手を出しました。

 

【私が買った本】

村上春樹カンガルー日和』(講談社文庫、1986.10)

100円、若干変色しているくらいで状態も良かったです。買い!

【宝探し度】

☆☆☆☆☆

 

今日はここまで!

*1:穂村弘「引っ越しと結婚と古本屋」(『整形前夜』、講談社、2009.4所収)より。彼氏に借りましたありがとう見てる??

コルドバでフラメンコが見られる観光客向けお手頃レストラン

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こんにちは。

引き続きスペイン旅行のことを書きます。

 

onceinabluemoonx.hatenablog.com

 

前回はグラナダアルハンブラ宮殿についてご紹介しましたが、今回取り上げるコルドバも、スペイン南部のアンダルシア地方に位置する都市です。

コルドバ後ウマイヤ朝の首都として8〜11世紀初頭に栄えたそうです。

メスキータに代表されるような、イスラム教時代の歴史的遺構にキリスト教の様式が上塗りされた街並みが、グラナダ同様特徴的でした。

 

ところでスペインといえばフラメンコですが、フラメンコはアンダルシア地方で始まった踊りだそうです。

ということで今回は、コルドバでフラメンコを見た話です。

 

 

 

1. アンダルシアに来たんだからフラメンコが見たい!

と思ったものの、学生なのであまり高いお金を出すことはできません。

すると友達が、日本人の方がフラメンコレストランを紹介しているブログを見つけてくれました。(改めて探しましたが見つからず…)

そこでそのレストランに行ってみることにしました。

 

2.Restaurante en Córdoba FEDERACIÓN DE PEÑAS

お店はメスキータにほど近い、細い路地の中にありました。

コンデ・イ・ルケ通りというそうです。混んでいるけ?と覚えたら忘れなさそう。

 

 

 

Restaurante en Córdoba FEDERACIÓN DE PEÑAS」では、1日に何回かフラメンコのシューを上演していて、食事をしながら鑑賞することができました。

私たちが訪れたのは最後の回で、確か9時過ぎくらいのショーでした。

公式サイトがあまり機能していないようで時間がよくわからないのですが、9時までに行けば間に合うのではないかと思います。

スペインは夜が長い国でした。

 

観光客向けのポイントを3点挙げておきます。

①値段がお手頃

②英語のメニューがある

③ウエイターが親切

 

①値段がお手頃

ガイドブックにもフラメンコが見られるレストランはいくつか載っていますが、値段が結構高いです。

例えばバルセロナのタブラオ(フラメンコショーを見られるレストラン)はディナー付きで約80ユーロだそうです。日本円で1万円超え…!

ところがこのお店では、前菜(スープ)、メイン(ミートボールとポテトフライ)、デザート(ソルベ)にワインを付けて14ユーロほどでした。2000円以下!

正直高級ディナーのようなお味ではないですが、これでフラメンコショーを見られるなら個人的には文句なし!でした。

 

②英語のメニューがある

これ大事。観光客が多いお店だからだと思います。

単品でも頼めましたが、コースが3種類くらいあるので、お財布と相談して好きなコースを選ぶと簡単です。

 

③ウエイターが親切

私と友人が到着したのはショーの開始前で、席がまだちらほら空いていました。

ウエイターの方が「よく見えるように」とステージの傍の席を案内してくれて驚きました。

アジア人の若い女二人を、丁寧にもてなしてくれるとは思わなかったので。

ショーが終わった後には、記念にステージに上がってみなよ!とわざわざ写真を撮ってくれました。感動。

たまたまラッキーだったのかもしれませんが、旅行期間を通して差別的な扱いを受けることがなかったのが印象的でした。スペインよい国だ…!

 

肝心のショーですが、力強く情熱的な踊りとエキゾチックなギターの演奏を聴けて大満足でした。

内装もメスキータをイメージしたらしいデザインで統一されていて良い雰囲気。

というわけでとてもオススメです。

コルドバに行かれた際はぜひ! 

 

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アルハンブラに憧れて

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さめよかし。かなた東の丘越えて、

日は星のつどひを夜よりやらひたり。

上りゆく天の原より、ひやうと射て、

サルタンのやぐらを撃てり、光の矢。*1

 

「今、ここ」ではない場所に、ずっと憧れている。

だから物語が好きだし、旅が好きだし、美術作品を眺めるのが好きだ。

社会という文脈の中に規定された「私」をひととき脱ぎ捨てて、何者でもない自分を見つけたとき、世界はきらきらしている。

ここではない「どこか」、その世界に没入して、一体化する体験を得たいのかもしれない。(なんだか怪しい宗教の宣伝文句みたいになってしまった。)

 

 

1. こんなときだからこそ、旅の思い出を語りたい 

家に篭ることしかできない日々はしんどい。

「一日の感染者が〇〇人を越え…」という速報を耳にするたび目にするたび、鬱々とした気分になる。

コロナウイルスの被害が特に大きいと報じられているのが、スペインだ。

昨年(2019年)の夏に訪れたスペインは、陽気な極彩色の国だった。

あの景色を、もう一度見たい。誰かに見てもらいたい。

こんなときだからこそ、旅の様子を振り返ることにした。

 

目的地にスペインを選んだ一番大きな理由が、「アルハンブラ宮殿」だ。

アルハンブラ宮殿ナスル朝の宮殿であり、イスラーム建築として有名である。

イベリア半島は一時期イスラーム支配下にあった。

ナスル朝は13〜15世紀に存在したのだが、レコンキスタによりキリスト教勢力に敗れたため、イベリア半島最後のイスラーム王朝となった。

レコンキスタは北から進み、最後は追い詰められる形で王朝が陥落したので、その首都・グラナダはスペインの南端、アンダルシア地方に位置する。*2

アルハンブラ宮殿の魅力がどこにあるかと言えば、歴史的な経緯が生み出したイスラム教世界とキリスト教世界の様式の融合にある。と私は思っている。

キリスト教徒の征服後、宮殿は破壊されるのではなく、スペイン王国カトリック両王の所有物となり、新たな意匠が施された。

ある意味グロテスクな文化の融合のありようには、人間の中にある本質的なものを感じずにはいられない。

 

前置きが長くなったが、私は無事アンダルシアの地を踏み、マッチ越えを果たしたわけである。(グラナダで「アンダルシアに憧れて」を聴くと非常にテンションが上がったのでおすすめ。)

ちなみに、スペインでは他にもいくつかの都市を周り、スリに遭って現金がなくなったりタクシーを逃して夜道を1時間徘徊したりという非常に貴重な経験をした。

これについても、今後機会があったら書きたい。

 

2. 夜のアルハンブラ宮殿

くどくどと語らない。写真を見てほしい。

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夜の宮殿を案内してもらえるツアーに参加した。

繊細なアラベスク模様に息を呑む。

カメラが上手く設定できなくて若干ブレているのが悔しいが、とにかく人の世ならざる雰囲気を感じてもらえたら嬉しい。

頭の中にはアラジンの「アーラビアナーアアイッ」という曲がエンドレスで流れていて、ディズニーの刷り込みは強いなあと思った。

そう言えばフィレンツェベネチアに行った時も、最初の感想は「ディズニーシーだ!」だったっけ…。

 

3. 朝のアルハンブラ宮殿

出国前、すでにアルハンブラ宮殿狂となっていた私は、一度だけではなくぜひ二度行きたい!と友達を説得し、翌日の朝のチケットも取ることにした。(個人でのチケットの取り方に興味がある人は4を見てください。)

ツアーの出発時間は決められているので、9時のオープンとともに入場しても1時間後にはホテルに戻らねばならない。

かくして私たちは、世界有数の美しい空間を競歩選手のごとく突き進むアジア人となることを決意した。

9月初めのスペインは、夜は21時になっても明るく、反対に日の出は遅かった。

7時半、薄暗がりの中アルハンブラ宮殿に到着。

ホテルからウーバーを使った。タクシーより割高だったが、スペイン語がわからなくても使えるので便利だ。アンダルシアではウーバーはそれほど普及していないのかもしれなかった。

 

宮殿内は複数のエリアに分かれていて、敷地はかなり広い。

王宮やヘネラリフェ(庭園)などの主要なエリアは9時まで入れないが、その他のエリアは公園のようになっていて早朝から散策できた。

 

軍事要塞としての顔を感じさせる砲台。

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街の輪郭がだんだんくっきりと浮かび上がってくる。

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朝日を浴びて赤い城。外見が質素なのもイスラーム建築の特徴らしい。
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王宮に入る。アラヤネスの中庭。
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ライオンの中庭。夜とはまた違った表情。
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天井。人間業とは思えない…。
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天国なのかな?
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窓から差し込む朝日が清々しい。
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パスタル宮。楽園のよう。
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王族の夏の別荘だというヘネラリフェ。花が咲き乱れていた。
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このような中を1時間で駆け抜けた。できることなら3時間以上はかけて見て回りたい。

 

 カラフルで陽気な国、スペイン。

自由に旅行できるような平和な日常が、早く戻ってくることを祈っている。

 

4. おまけ

個人でのチケットの入手方法について、備忘録として書いておきたい。2019年9月時点での情報なので、正式な方法については各自お調べください。参考程度にどうぞ。

公式HPを見ると、チケットはすぐに売り切れてしまうように見えるのだが、2週間前になると少数だが再度チケットの追加販売をしていることがわかった。日本時間0時頃に更新される。

時間指定制で、空きのある分だけ再販しているようなので、例えば9:00 15枚、10:30 4枚、といった時間・枚数の設定になっている。

希望の時間のチケットが残っているかどうかは運次第なので、できることなら3ヶ月前(?)に発売が開始された時点で押さえておくと良さそうだった。

購入の際にはパスポート番号の入力が必須となる。

私は友達の番号を聞いていなかったので、購入が数時間遅れ、一度予定枚数が終了してしまった。

世界中からチケットを求めてユーザーが競い合っている状態だと考えておいた方が良い。

しかし、その後諦めずに何回かHPを更新していると、同じように購入手続きをキャンセルした人がいたようで、何とかチケットを確保することができた。

コロナ収束ののち行かれる方は、ぜひチケットを入手して、ゆっくりと楽園を堪能してみてほしい。

*1:オマル・ハイヤームエドワード・フィッツジェラルド英訳・竹友藻風邦訳『ルバイヤート』(マール社、2005)

*2:山川出版社の『世界史B用語集』等参照。